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「ペロブスカイト」とは? 従来の太陽発電と違いは何? ESG推進企業が簡単に解説!

2024.11.11

はじめに

近年、新しい太陽電池として注目を集めているのが「ペロブスカイト」です。

2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、再エネの拡大は必要不可欠と言われていますが、平地面積の少ない日本では、様々な制約があり普及が進んでいないのが現状です。
そのような中で、再エネ拡大の鍵を握る新たな太陽電池として注目されているのが、「ペロブスカイト太陽電池」です。

2024年6月21日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2024」には、ペロブスカイト太陽電池の支援が記載されており、「政府としても注力していく技術」であることが分かります。

では、一体「ペロブスカイト」とは何のことなのでしょうか?
そして、従来の太陽電池とはどう違うのでしょうか?

「ペロブスカイト」とは?

従来型の太陽電池と何が違うの?

まず、太陽電池と聞いて、広大な敷地や工場、ビルの屋上にずらっと敷き詰められている大きなパネルを思い浮かべるかと思います。
それらは、「シリコン系太陽電池」と呼ばれ、耐久性に優れていますが重量があり、設置できる場所が限られています。

太陽光パネルの設置イメージ
広い土地に設置された太陽光パネル

一方で、開発が進められている「ペロブスカイト太陽電池」は、フィルムのように軽くて薄く、曲げることが可能という、従来のものとは大きく異なる性質を持ちます。

上記の特徴から、今まで、太陽光設置が不可能であった場所へも導入ができるため、次世代型の太陽電池として注目を集めているのです。

そもそも「ペロブスカイト」とは?

「ペロブスカイト」とは、簡単に言うと、材料となる化合物の名前です。
「灰チタン石」と呼ばれる鉱物のことを指し、その結晶構造を持つものを総称して「ペロブスカイト」と呼びます。

つまり、ペロブスカイト太陽電池は、その名の通り、「ペロブスカイトの結晶構造」を持つ化合物を用いた太陽電池のことを指します。

ペロブスカイト太陽電池のメリットとデメリット

メリット

①曲げられる
ペロブスカイト太陽電池は、柔らかく様々な形に加工することが可能です。
そのため、ビルの側面や丸みのある物など、従来は不可能であった場所へも設置できます。

②軽い・薄い
フィルムのように軽くて薄いという特徴があります。
従来のシリコン系太陽電池と比べると、厚さは約100分の1、重さは約25分の1。
この特徴から、建物の他に車やドローン、衣服など、あらゆるものへ導入することが可能です。

③低コスト
従来の太陽電池のように、高価な金属(レアメタル)を使用しません。
材料も、日本で入手しやすいヨウ化鉛やメチルアンモニウムを使用するので、材料費・製造費を大幅に削減できます。

④塗布技術や印刷技術で作製が可能
太陽電池モジュールの基板へ層材料を直接塗布できたり、印刷の技術を応用して大量生産することが可能となります。

デメリット(普及しない理由)

①寿命
紫外線や湿度などの影響を受けやすく「劣化しやすい」性質を持ちます。シリコン系太陽電池の寿命20年に対し、ペロブスカイト太陽電池は開発当初で「寿命5年」と、非常に短いことが大きな課題となっていました。

②鉛を使用することによる安全性への懸念
ペロブスカイトの原材料には少量の人体に有害な鉛が含まれています。
そのため、万が一、経年劣化や破損等で、成分が流出してしまった際の安全性が懸念されています。

③大面積化が難しい
性能にばらつきが出やすいため、シリコン系太陽光電池のように大面積での製造が難しいのがデメリットとなります。

しかし、現在では開発が大きく進み、上記で挙げた3つのデメリットも解消されつつあります。
特に、安全性に関しては、鉛が含まれない材料を使って製造する研究が進められており、スズを代用して作られたペロブスカイト太陽電池が、高変換効率を達成した結果も出ています。
その他、寿命や大面積化の問題を解消する研究結果も続々と出ているため、実用化される未来が目前のところまで来ています。

ペロブスカイト太陽光電池でできること

では、ペロブスカイト太陽電池が実用化されると、実際にどの様な変化を社会にもたらすのでしょうか?

ペロブスカイト太陽電池が普及すれば、再生可能エネルギーの拡大に大きく貢献できると言われています。

しかし、日本では既に太陽光導入の用地が足りないのが現状です。
日本政府は、2030年度に電源構成比の14%〜16%を太陽光発電で構成する方針を固めていますが、直近で挙がっている2022年度のデータでは「太陽光が電源構成比を占める割合」は9.2%となっており、約5年で残りの数字を補わなければ政府の目標を達成できない計算です。

そこで切り札として登場するのが、ペロブスカイト太陽電池です。
実用化できると、建物の窓や壁などにも設置が可能となり、用地不足による太陽光導入率の頭打ちが解消されます。

また、ペロブスカイト太陽光電池を導入すれば、送配電ロスを低減させることにも期待ができます。
発電した電力を送電するには電力系統(送電網など)が必要です。
しかし、送電の距離が長くなると、変電所で電力を変換する際にエネルギーを消耗します。
これが「送配電ロス」です。
ですが、ペロブスカイト太陽電池を導入すれば、電力の需要が大きい地での発電量を増やすことができるので、こうした送配電ロスを低減させることにも繋がるのです。

早期の実用化が「産業化」への鍵

日本政府は、2023年10月3日に「2025年の実用化を目指す」旨を公表しました。
また、2030年には、北海道・本州間の海底直流送電を含め、全国で系統の整備を進めると記載されてます。
(参考:「経済財政運営と改革の基本方針2024 についてhttps://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2024/2024_basicpolicies_ja.pdf

しかし、世界的に見ると若干遅れを取っているのが現状です。
とはいえ、既に実用化のフェーズに進んでいる中国やポーランドも試験段階ではあり、日本にも挽回の余地は残されています。
日本がペロブスカイト太陽電池の「産業化」を確立するためには、量産技術や生産体制も早急に整備する必要があるのです。

まとめ

ペロブスカイト太陽電池は、日本が抱える地理的問題をクリアにし、再生エネ普及を後押しする次世代の技術になります。
国内での実用化も2025年に控えており、近い将来、今までは考えもつかなかった場所に設置されている太陽電池を目にするのではないでしょうか。

これからも当社は、環境に関するトピックや問題を発信して参ります。
また、アップルツリーでも、再エネ推進への取り組みを積極的に行っておりますので、ご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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