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グラフェン太陽電池とは?実用化に向けて開発が進む新素材

2023.01.15

日本においても年々普及が進んでいる太陽光発電システムですが、その太陽光パネル(太陽電池)も年々進化を遂げています。

太陽電池の性能を格段に上げる素材として現在開発が進んでいるのが「グラフェン」です。この記事では、「グラフェン」がどんな素材なのか、どんなメリットがあるのかを掘り下げていきましょう。

グラフェンとは

グラフェンとは、炭素原子からつくられる物質の一つで、蜂の巣のような形(ハニカム構造)をしている点が特徴です。

この構造もあり、内部を「電子」が自由に移動できるため電気伝導性に優れています。その速さは、常温環境下では「あらゆる物質のなかで一番速い」とも言われています。

そのほか、極めて薄い、軽い、強度を保ちながらも自由に折り曲げられるなどの特徴を持っているため、非常に使いやすい物質となっています。そのため、スマートフォンやディスプレイ、タッチパネルに使う有機ELに使う素材として現在開発が進んでいます。

グラフェン太陽電池の特徴

太陽電池とは、太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変えるための装置です。

太陽電池は、さまざまな技術によってつくられていますが、大切な仕組みの一つが「透明電極」。多くの素材は「光」を遮ってしまいますが、太陽電池は太陽光を取り入れなくてはいけないため、光を反射・吸収せずそのまま通す「透明電極」が必要なのです。

従来はこの透明電極に、ITO(インジウムスズ酸化物)が使われてきましたが、その代わりとなる新たな素材としてグラフェンが注目されているのです。その理由としては、下記が挙げられます。

・光透過性が100%に近い

・電気伝導性が高い

・熱安定性に優れる

・柔軟性・強度が高い

・劣化が少なく長持ちする

このように、グラフェン太陽電池には数多くのメリットを秘めています。

実用化に向けて開発進む

多くのメリットを持つグラフェン太陽電池ですが、未だ世界的な普及には至っておらず、研究開発が現在進行系で進められている段階です。しかし、一部は中国やアメリカ、イギリスの会社などによって実用化が実現。太陽光発電所などでの採用が進んでいます。

具体的には、ドイツのカールスルーエ工科大学(KIT)・河北大学・中国のモジュールメーカーYingli Green Energy Holding Co., Ltdの3者が共同で研究チームを立ち上げ、グラフェンを用いて変換効率18.8%のモジュール開発に成功しました。

このグラフェンシリコン太陽電池は、18.8%の電力変換効率を達成することができたと報告されている。疑似J-V曲線は、深刻な抵抗効果を伴わない疑似充填率80.6%を示しており、さらなる最適化により21.59%の効率が達成できる可能性が予測される。

pv magazine「Graphene/silicon heterojunction solar cell with 18.8% efficiency」

すでにサンディエゴのモジュールメーカーFreeVolt™では、グラフェンを用いた住宅用モジュールの開発に成功しており、一般販売も行っています。

このようにグラフェン太陽電池は近年急速に開発が進んでいるため、今後は日本においても実用化が進んでいくでしょう。薄くて軽いなどグラフェンの特徴を活かした、革新的で効率的なモジュールが多方面において使えるようになるかもしれません。

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