ドイツが推し進めている環境政策「エネルギーヴェンデ」をご存知でしょうか。
脱原発・脱化石燃料を謳うこの政策は、2010年からドイツにて取り組みが始まっています。しかし2022年、ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあり、政策に陰りが見え始めているのです。
この記事では、ドイツが抱える深刻なエネルギー問題について紹介します。ぜひ最後まで読んでみてください。
エネルギーヴェンデとは
エネルギーヴェンデ(エネルギー大転換)とは、ドイツで推進されているエネルギーに関わる政策の一つです。その内容は、国内で消費するエネルギーを原子力・化石燃料から再生可能エネルギーに置き換えるというもの。
この政策により、1990年比で2030年に二酸化炭素を含む温室効果ガスを55%削減を目指しています。加えて、再生可能エネルギーが国内の全エネルギーに占める割合を総電力使用量の80%とすることを目標に掲げているのです。
画期的な取り組みであるエネルギーヴェンデですが、下記の課題も抱えています。
- 電力不足が懸念される地域でへの送電網整備
- 電力の需給バランスを整えるバックアップシステムの構築
- 電気料金高騰への対応
- 地域間の電力格差是正
これらの課題を解決してはじめて、エネルギーヴェンデは実際的な効果を発揮する政策となるでしょう。
しかし・・・
エネルギーヴェンデが抱える深刻な課題は、さらに別のところにあるのです。
ドイツが迎える今年の冬
2022年、ドイツのエネルギーヴェンデは「難しい状況に置かれてるのではないか」との意見が出ています。その理由は、ロシアのウクライナ侵攻にあります。
原子力・化石燃料に変わる代替エネルギーとしてドイツが考えていたのは、ロシアからの天然ガス供給です。
しかし、バルト海経由でロシアからドイツに天然ガスを供給する海底パイプライン「ノルドストリーム1」が戦争の影響、および政治的な影響もあって稼働量が大幅減。さらに新しく建設された「ノルドストリーム2」は稼働開始にすら至っていません。
これによりドイツは、エネルギーミックス(電源構成)の15%を占める天然ガスの供給を十分に受けることができないでいるのです。
\ドイツのエネルギーミックスについてはこちらもお読みください/
【世界環境ジャーニー・ドイツ】再エネ推進と脱原発を同時に進める環境先進国の取り組みとは?
ドイツでは2011年時点で17基の原発が稼働していましたが、現在すでに14基が停止。され、残る3基も2022年内に停止予定となっていました。
しかし、ドイツ経産省はロシアの動向も踏まえたうえで7月に
- ロシアからのガス供給停止の可能性が高まっている
- 原発の閉鎖延期を検討する
との発表を行っています。
ドイツの冬は寒くて厳しいことで有名ですが、ロシアからの天然ガス供給が止まれば国民の生活が危うくなります。今冬、ドイツがどのようにして冬を越すのかに注目が集まっているのです。
日本を含め世界の状況が変わる
この問題は、ドイツのみに関わる内容ではありません。世界各国にも大きな影響を与えているのです。
すでにイギリスでは、今冬に停電がある可能性が示唆。ウクライナでもインフラ損傷の観点から停電が発生する可能性があることが、政府から国民に対して伝えられています。
冬本番を前にして、世界を取り巻くエネルギー状況が大きく変わっています。欧州のエネルギー情勢が、アジア・日本に対してどのように影響を与えるか未知数な部分があるでしょう。欧州の状況に目を光らせていく姿勢が非常に重要です。
アップルツリーは今後も環境に関する問題を発信してまいりますので、ぜひ環境問題について考える参考としてください。