1.はじめに
現代社会における環境問題やエネルギー課題の深刻化を背景に、「GX(グリーントランスフォーメーション)」という言葉があり、持続可能な未来を実現するための重要な取り組みとして注目を集めています。
化石燃料からクリーンエネルギー中心へと転換させ、経済や社会システム全体に変革を与えようとする取り組みであるGXは、世界共通課題に向けた取り組みであると同時に、企業にとっては経済成長の機会でもあると言えます。
本記事では、そのGXの本質に迫りつつ、その具体的な道筋を探っていきます。
目次
2. 持続可能な社会の実現
まず、持続可能な社会とは、「現在の世代も将来の世代も豊かに暮らせる社会」のことを意味しています。そしてGXとは、その持続可能な社会を実現するため、環境問題への対応と経済成長を両立させる取り組みのことを示しています。
つまり、GXの目的を簡単にまとめると、「環境負荷を最小限に抑えながら経済と社会の持続可能な発展を実現すること」なのです。
現在、多くの国や企業がこの方向性に基づき、温室効果ガス排出の削減目標を設定し、具体的なアクションを展開しています。
3. 脱炭素化
GXの核となる目標の一つが「脱炭素化」です。二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出を抑えることで、地球温暖化を防ぎ、気候変動に対処する取り組みが含まれています。具体的には、以下のようなアプローチが注目されています。
- カーボンニュートラル:CO2排出量を実質ゼロにすることを目指した政策や技術。
- 再生可能エネルギーの普及:太陽光や風力などの自然エネルギーを活用する動きが加速。
日本でも2050年カーボンニュートラル目標に向け、産業界や政府が一致団結して取り組んでいます。
4.再生可能エネルギーの活用
上記でも挙げた通り、再生可能エネルギーの利用は、GXを推進する上で欠かせません。
太陽光、風力、水力、地熱といった自然の中で生まれる再エネは、化石燃料に代わる「持続可能なエネルギー源」であると言えます。
これらのエネルギー源は、自然環境から得られるため枯渇の心配がなく、また、従来主流であった化石燃料に比べCO2排出量を大幅に抑えることが可能です。
現在は、「技術革新により導入コストが低下したこと」や「政策の後押し」により、多くの地域で導入が進んでおりますが、再エネの特徴である「天候や時間帯等によって発電量が大きく変動する」点への対策など、まだ課題が残っているのが現状です。
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5. エネルギー効率の向上
エネルギーの効率的な利用も、GXにおいて重要な役割を果たします。最新の技術やシステムを活用することで、無駄なエネルギー消費を削減し、全体的な使用効率を高めることが可能です。
- 省エネルギー技術:建物の断熱性向上や高効率な家電製品の普及が進行中。
- スマートグリッド:電力の需要と供給を効率的に管理するシステム。
- VPP:一般企業の建設物や家庭に散らばった小規模発電設備をIoTで一括管理するシステム
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これらの技術は、個人の家庭から大規模な産業まで、幅広い分野で活用が期待されています。
6. 循環型経済と廃棄物削減
資源の無駄遣いを防ぎ、廃棄物を減らす「循環型経済」もGXの重要な柱です。この経済モデルでは、製品や材料の再利用・リサイクルを通じて、資源の利用効率を最大化します。
具体例として、
- プラスチックリサイクル:使用済みプラスチックを新たな製品に再生。
- 脱プラスチック:紙素材・木材・バイオマスプラスチック・生分解性プラスチックの開発
- 食品ロス削減:未利用食品の寄付や再利用を促進。
これらの取り組みは、持続可能な社会を築く上で欠かせません。
7.環境に優しい技術の研究開発
GXを進める上で、新しい技術の研究開発は不可欠です。
例えば、水素エネルギーやカーボンキャプチャー技術(CCUS)は、脱炭素化に貢献する取り組みとして環境負荷を大幅に軽減する可能性を秘めています。
これらの技術の実用化が進めば、さらに効果的なGXの実現が期待されます。
8. 社会全体の意識改革
GXの成功には、社会全体の意識改革も必要です。教育や啓発活動を通じて、個人や企業が環境保護と持続可能な発展の重要性を理解し、行動を変えることが求められます。
例えば、
- 学校教育での環境教育の強化
- 企業内研修での持続可能な経営への意識向上
現在では、経済産業省を筆頭に政府や大学、学術機関、企業が連携できるフォーラム「GXリーグ」が発足されていたりと、社会全体の意識を改革させるためにお互いが手を取り合える場作りが進められています。
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また、意識改革には、それぞれ個人単位での小さな意識の変化から進めていく必要性があり、それが積み重なることで、社会レベルでの大きな変容に繋がることを忘れてはなりません。
9. 国際協力と企業のESG経営
GXには、国際協力や企業のESG経営の推進が欠かせません。
例えば、パリ協定やSDGs(持続可能な開発目標)は、各国が連携し、地球規模の課題に取り組むための重要なフレームワークとなっております。
また、企業においては、ESG経営の推進が注目され、環境・社会・ガバナンスの3つの要素を重視した経営方法の導入が進んでいます。ESG経営は、環境や社会状況への配慮と、企業内外の健全な管理体制構築を行い、持続的な発展を目指す経営のことを指します。
ESG経営はSDGsと同じく、環境・社会の要素が含まれているため混同されがちではありますが、ESG経営とは「投資家への配慮を加えた企業としての取り組み」を表す言葉であり、企業の長期的な発展・可能性を図る重要な指標となっております。
10.まとめ
GXは、個人、企業、社会全体にとって、持続可能な未来を切り開く大きな道筋となります。また、「DX」とはテクノロジーの変化に対応する事、「GX」とは環境の変化に対応する事、それぞれ"社会の変化に対応する事"を本質としています。
脱炭素化、再生可能エネルギーの利用、エネルギー効率化、そして意識改革まで、多方面での取り組みが相互に関連しながら、最終的にはより良い持続可能な社会を築いていくのです。