はじめに
昨今、再生可能エネルギー事業主が自らの手で、太陽光や風力の発電を抑制する「出力制御」を実施しているのをご存知でしょうか?
「出力制御」とは、電気の需要と供給を一致させるために、発電する量をコントロールする(発電停止・または捨てる)ことです。
朝日新聞社の集計によると、出力制御は2023年を皮切りに急増し、「1年間に制御された電力量が全国で計約19.2億キロワット/時」にも達していることが報じられています。
太陽光と風力による発電を一時的に止める出力制御が2023年に急増し、1年間に制御された電力量が全国で計約19.2億キロワット時に達したことが朝日新聞の集計でわかった。約45万世帯分の年間消費電力量に相当する。
「再エネ発電の「出力制御」急増」朝日新聞.2024-03-11,朝日新聞デジタルhttps://www.asahi.com/articles/DA3S15883507.html(参照2024年10月23日)
しかし、日本は2050年までに二酸化炭素の排出を実質ゼロにするという「カーボンニュートラル」の実現を目指していることもあり、再生可能エネルギーの普及は急務ともいえます。
では、どうして、再生可能エネルギーの普及が急がれているのに、せっかく発電した電力を「捨ててまで」出力制御を行わざるをえないのでしょうか?
そして、さらにそれらを解決する鍵である「系統用蓄電池」について解説していきます。
そもそも再生可能エネルギー(Renewable Energy)とは?
再生可能エネルギー(以下、再エネ)とは、太陽光や風力、地熱といった地球資源の一部など、自然界に常に存在するエネルギーのことを指します。
2015年には、温室効果ガス排出削減等のため、国際枠組みとして「パリ協定」が採択されました。
また、2020年には、菅総理(当時)が「2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」宣言があり、再エネの導入が急務となっております。
そのような中で、日本の再エネ由来の発電電力が占める割合は、2022年度時点で約21.7%となっています。
2030年度の目標を36〜38%と掲げていますが、まだ遠く及ばないのが現状です。
更に加速的に普及を進めなくてはならないことが分かります。
再エネを普及させたい3つの理由
先ほども説明した通り、再エネを普及させたい背景には、パリ協定や2050年までに脱炭素社会の実現を目指すという宣言があります。
しかし、そうした背景以外にも再エネの普及を急がなければならない理由があります。
1. 1次エネルギー不足
「1次エネルギー」とは、石油、石炭、天然ガスなど、自然から直に採取できるエネルギーのことを指します。
日本は他国と比べ、自然から直に採取できる一次エネルギーの自給率は少なく、2021年度では僅か13.3%となりました。
これは他のOECD諸国と比較してもかなり低い水準です。
しかし、高度経済成長からエネルギーの需要は増え続けているため、他国から資源を輸入し続けなければならないのが現状です。
2. 原子力発電の危険性
日本は、石油・石炭等のエネルギー資源の乏しさや、高度経済成長期以降の電力需要の増加により、エネルギーの安定的な供給を守るため原子力発電の導入を進めていました。
しかし、2011年の東日本大震災時に発生した福島第一原子力発電所事故により、原子力発電には大事故の危険性があることが改めて証明され、現在も根強い反対活動が続いています。
そのため、原子力に替わるエネルギーとして、再エネが注目されているのです。
3.地方の生活基盤維持のため、エネルギーインフラの地産地消を促進
一見、エネルギー問題と関係が無さそうに見える少子化問題ですが、実は経済だけでなく、地域社会や地方のインフラにも大きな影響を与えています。
地方の発電所やその他のインフラは、地域の人口規模に合わせて運営されており、人口減少により利用者が減少すると維持が難しくなってしまいます。
そのため、少子化により人口減少が続いてしまうと、生産コストが急激に上昇、そして、インフラにかかる負担が一部の住民に集中してしまうのです。
これにより、地方経済圏が縮小しインフラに打撃を与え、生活基盤が脅かされてしまっています。
このような状況の中で、電力会社は従来の電力供給の方法の見直し、つまり再生可能エネルギーへの転換が求められています。
地元の資源を活用して電力を生産し、地元で使うという「地産地消」の考えを取り入れつつ、再エネの導入を積極的に推進していく必要があるのです。
普及させたいのになぜ余る?「余剰電力」について
しかし、再エネの普及を進めている中で、せっかく発電した電力(再エネ・火力発電の両者含む)が余り、捨てられるという事態が発生しています。
特に九州では、再エネから発電された電力の9%が廃棄されたというデータも出ています。
また、経済産業省の試算によると、2030年の再エネ導入目標を達成させた場合、対策を投じなければ「半数以上の電力が捨てられる」と見込まれており、国を上げての対策が急務となっております。
そもそも、発電した電力が余剰状態になるという問題は、発電した電力が需要を超えた場合に発生します。
この様な状況に陥ると電力会社は、需要と供給のバランスを整える「出力制御」を行い、発電量が既存の送電網の容量を超えてパンクしないように調整します。
これにより、余る電力が発生、せっかく発電した電力が無駄になるという問題を引き起こしてしまうのです。
では、この課題を解決するには一体どうしたら良いのでしょうか?
解決の鍵を握る「系統増強」とは?
「余剰電力」の課題を解決するには、電力系統(送電網・配電網・変電所など設備)の強靱化、すなわち「系統増強」が鍵を握っています。
太陽光や風力等の再エネは、天候や時間帯等によって発電量が大きく変動します。
そのため、天気が良く風の強い日などは、タイミングによって「発電量が電力需要を大幅に超えてしまう」特性があるのです。
では、再エネに適した「系統増強」とはどのようなものでしょうか?
「系統用蓄電池」が打開策
この再エネの「系統増強」を担う存在として注目されているのが系統用蓄電池です。
系統用蓄電池は、昼間に発電された再エネなどの余剰電力を一時的に貯める役割を担います。
そして、電力需要が増加する夕方や夜間等に貯めた電力を、効率的に系統へ供給することで電力安定供給の支えとなります。
需要と供給の安定を支える系統用蓄電池
系統用蓄電池は、再エネ電源など無駄なくエネルギーを活用し、地域全体の電力需要をサポートします。
系統増強の一翼を担うことから、大きな期待を寄せられています。
まとめ
再エネの余剰問題と電力ラインの過負荷を防ぐため、系統用蓄電池は、今後ますます重要なインフラとなっていくでしょう。
系統用蓄電池の導入は、エネルギーの地産地消をさらに推進し、地域ごとのエネルギー自給率を高めることにもつながります。
また、系統用蓄電池の普及は、再エネの不安定さを補完し、カーボンニュートラル社会の実現に向けた鍵となります。
アップルツリーでも、系統用蓄電池の開発、再エネの推進など積極的な取り組みを行っております。
再エネ導入に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。