世界各国の環境への取り組みを取り上げる「世界環境ジャーニー」も、今回で3回目のお届けです!
地球温暖化は、全世界一丸となって取り組むべき最重要環境問題です。次世代に住みよい地球を残すためには、国境を越えた取り組みが必要になります。国内の状況や取り組みだけでなく、世界に目を向けて視野を広げましょう。
今回は、脱炭素化に取り組む南アフリカ共和国の現状についてご紹介します。
脱炭素化が急務の南アフリカ共和国
南アフリカ共和国(以下南アフリカ)は、脱炭素化が急がれる国のひとつです。同国は国内電力の約7割を石炭・石油発電に依存しており、年間で4億3,800万トンの二酸化炭素を排出しています。
また、2021年時点で世界12位の排出量であり、アフリカ諸国ではトップです。南アフリカが脱炭素社会を築くことは、同国だけでなく、世界的にも重要と言えるでしょう。
2019年に導入された炭素税法とは
脱炭素化が叫ばれる中、南アフリカでは2019年6月に炭素税法が導入されました。
炭素税とは、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料の炭素含有量に応じて課せられる税金のことです。企業や国の活動による二酸化炭素排出を抑える目的があります。炭素税は世界各地で導入されており、日本でも2012年に取り入れられました。
南アフリカでの導入は2015年に採択されたパリ協定に基づく対応策で、アフリカで導入されたのは南アフリカが初めてです。2010年以降導入が検討されてきましたが、国内の産業界からの反対により3度延期されてきました。
導入当初の税率は1トンあたり120ランド(約8ドル)の税率でしたが、その後はインフレ率(CPI)に応じて増額される仕組みです。2022年まで毎年インフレ率に2%を加えた形で増加し、その後は毎年インフレ率によって増加(変動)していく予定です。
現在は第1フェーズ(2019年~2022年)が終了しています。
2030年までに”段階的”に脱炭素化を目指す
脱炭素化が急がれる南アフリカですが、移行スピードはゆるやかなものになる見込みです。2021年10月、同国のマンタシェ鉱物資源・エネルギー相は、石炭火力発電から再生可能エネルギーへの移行を段階的に進める方針を表明しました。本来は2019年から2030年にかけて、使用電源のうち石炭の比率を7割から4割に削減する計画でした。
しかし、南アフリカは発展途上国であるため、代替エネルギーが限られています。石炭からの脱却を急ぎすぎれば、エネルギー危機を招く可能性があるのです。
同相はこのことを受け、2030年までに石炭使用比率を6割未満に減らし、再生可能エネルギーの比率を増やすという目標に軌道修正しました。2030年までのエネルギー種類別の目標容量は、下記のとおりとなっています。石炭排気量(Coal retirements)を段階的に減らしていく方針です。
Energy storage:エネルギー貯蔵量 Solar thermal:太陽熱 PV:太陽光 Wind:風力
Biomass & waste:バイオマス・廃棄物 Hydro:水力 Nuclear:原子力 Oil & diesel:石油・ディーゼル
Gas:ガス Coal:石炭 Coal retirements:石炭排気量
出典:BloombergNEF「2030 South Africa Roadmap」
まとめ
南アフリカは気候変動の影響を受けやすい国と言われており、現在もさまざまな自然災害が発生しています。2022年4月には、クワズールー・ナタール州の中心都市ダーバンとその周辺で、死者443名にのぼる大豪雨が発生しました。今後、どのように気候変動に対応していくかが課題となるでしょう。
今回は、南アフリカ共和国で行われている環境対策について取り上げました。アップルツリーは今後も、国内のみならず各国で行われている環境問題への対応を紹介してまいります。