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カーボンフットプリントとは? 意味や算定方法、企業の取り組み事例まで解説

2025.03.27

カーボンフットプリント(CFP)とは、私たちが日々使う製品やサービスが生み出す温室効果ガスの「足跡」を可視化する指標です。この記事では、CFPの意味や算定方法、企業の取り組み事例を紹介し、企業レベルで環境負荷を減らしていくためのヒントを探っていきます。

1. カーボンフットプリントとは?

カーボンフットプリント(CFP)とは、製品やサービスがライフサイクル全体で排出する温室効果ガス(GHG)を二酸化炭素(CO₂)換算で数値化した指標です。

「フットプリント」は足跡を意味し、人や企業が環境に与える影響を「見える化」することで、削減への取り組みを促し、CFPの算定対象は、原材料の調達から製造、輸送、使用、廃棄、リサイクルまでの工程を含みます。

例えば、1本のペットボトル飲料の場合、ボトル製造や飲料生産時の排出量に加え、輸送時の燃料消費、消費者が冷蔵庫で冷やす際の電力使用、さらには廃棄・リサイクルまでの排出量を合算して算出します。

2. カーボンフットプリントが注目される背景

CFPが近年注目を集める背景には、気候変動対策への国際的な取り組みと、消費者や企業の意識の変化があります。

まず、国際的な動向としては、2015年に採択されたパリ協定で掲げられた温室効果ガス削減目標が重要な要因です。この合意に基づき、各国が排出量削減に向けた対策を進めています。特に欧州連合(EU)では、CFP開示を義務付ける動きが加速しているのが現状です。

また、消費者の環境意識の高まりもCFPへの注目を後押ししています。近年は「エシカル消費」や「グリーン購入」といった考え方が浸透し、環境負荷の少ない製品を選ぶ消費者が増えています。

更に、企業側でもESG経営の重要性が高まっています。投資家は環境への配慮を企業評価の指標として重視するようになっており、CFPの開示や削減に積極的に取り組むことが、企業価値を高める要素となっています。

3. カーボンフットプリントの算定方法

CFPは、ライフサイクルアセスメント(LCA)という手法を用いて算定します。LCAは、製品やサービスのライフサイクル全体で発生する環境負荷を定量的に評価する手法で、国際標準規格(ISO14040/14044)に基づいて実施されます。

算定の流れは、まず対象とする製品やサービスを選定し、そのライフサイクルの範囲を決定します。

出典:経済産業省、環境省「カーボンフットプリントガイドライン(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_footprint/pdf/20230526_3.pdf)」

次に、原材料調達や製造、輸送、使用、廃棄といった各工程での排出量をデータとして収集します。たとえば、製造時の電力使用量や輸送時の燃料消費量などが該当します。

その後、収集したデータをもとに排出量をCO₂に換算します。

出典:経済産業省、環境省「カーボンフットプリントガイドライン(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_footprint/pdf/20230526_3.pdf)」

温室効果ガスには二酸化炭素だけでなくメタンや亜酸化窒素も含まれますが、それぞれの温暖化係数に応じてCO₂換算値で算出されます。最後に、ライフサイクル全体で発生した排出量を合算し、CFPとして表示します。

4. カーボンフットプリントの表示と企業の取り組み事例

CFPは、製品やサービスごとに表示されることで、消費者に対して環境負荷を分かりやすく伝える役割を果たします。日本国内でも、環境省主導でCFPの表示が推奨されており、製品パッケージに「製造時のCO₂排出量:200g」といった数値が記載されるケースが増えています。簡単に言うと、お弁当のカロリー表示と同じ様なイメージ感です。

実際にCFPの表示・削減に取り組む企業も増加しています。

株式会社コーセー

原料の工夫や容器リサイクルの検討を進め、商品パッケージにQRコードを印刷し、詳細なCO₂排出削減量を記載したサイトへ誘導する方法も検討しています。
参考:株式会社 コーセー「カーボンフットプリント算定による気づき、今後の展開」(https://www.env.go.jp/content/000118243.pdf)」

キリンホールディングス

ビール製造から輸送、販売までのCFPを開示し、排出量削減に向けたサプライチェーン全体での対策を進めています。
参考:キリンホールディングス「『キリンサプライチェーン環境プログラム』をスタート」(https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2024/0424_01.html)」

オールバーズ

カーボンオフセットに頼らず、製造方法やサプライチェーンを見直しカーボンフットプリント0.0kgを実現しました。

サトウキビ由来の80%カーボンネガティブな新開発素材、メタンを微生物により成形可能なポリマーと変換する技術など、材料はもちろんパッケージまで全てにおいて工夫されております。
参考:プレスリリース「世界初のネット・ゼロカーボン・シューズ「M0.0NSHOT」プロジェクトを発表」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000041.000052205.html)」

5. カーボンフットプリント削減のポイント

CFP削減には、製造や輸送、使用段階での工夫が欠かせません。

まず、製造工程では再生可能エネルギーの導入が有効です。工場での電力を太陽光発電や風力発電に切り替えることで、CO₂排出量を大幅に抑えることができます。国内では再エネ導入を加速する企業が増えており、電力調達そのものを見直す動きが広がっています。

次に、輸送段階では配送ルートの最適化や環境負荷の少ない輸送手段の導入が求められます。例えば、電動トラックや燃料電池車(FCV)の導入により、従来のディーゼルトラックと比べて排出量を削減できます。

また、どうしても排出をゼロにできない場合はカーボンオフセットの活用が有効です。

カーボンクレジットを購入することで排出量を相殺したり、植林活動への参加で実質的な排出量を減らす取り組みが進められています。

6.まとめ

今後、CFPは国際的な規制強化とともに、さらに重要性が増すと予想されます。

日本国内でも、経済産業省と環境省がCFP算定と表示に関するガイドラインを策定し、企業の取り組みを後押ししています。

カーボンフットプリントは、企業が温室効果ガス排出量を可視化し、削減に向けた具体的な取り組みを行うための重要な指標であり、消費者にとっても環境負荷を意識した購買行動を促すきっかけとなります。

今後はCFPの算定・表示が企業の競争力や信頼性を高める要素となり、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速するでしょう。

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