地球温暖化や気候変動、森林破壊、海洋汚染など、今地球は数多くの問題を抱えています。しかし、私たちの将来や子どもたちの未来を守るためにも、サステナブル(持続可能)な社会をつくっていかなければいけません。
日本でも省エネなどさまざまな取り組みが行われていますが、世界各国はどのような環境に関わる課題を抱え、その課題に対してどのように取り組みを進めているのでしょうか?
そこで今回からは「世界環境ジャーニー」として世界の国々で行われている取り組みを1カ国ずつ紹介していきます。
第1回目の今回は、2021年に環境対策として新たな法律を施行したフランスについて見ていきましょう。
国民の声を反映させた「気候変動対策・レジリエンス強化法」が2021年公布
日本では「環境対策」といえば国や企業が主導するイメージを多くの人が持っていると思います。フランスの環境対策でフォーカスされているのは「市民の声」なのです。その背景を簡単に紹介しましょう。
フランス政府は、2021年8月に「気候変動対策・レジリエンス強化法」を公布しました。同法を中心として、フランスは2030年までに温室効果ガス排出量40%削減への取り組みを進めていくことになります。
この法律は、抽選で選ばれた市民150人からなる「気候市民会議」がまとめた政策提言を基に策定されています。
「気候市民会議」とは、直接民主主義を実現するべくマクロン大統領が導入をした制度であり、趣旨に賛同する国民から150人を選ぶことで発足した組織です。政府機関の下部組織として環境政策について議論を重ね、最終的に政府に対して「気候変動対策・レジリエンス強化法」のベースとなる149もの施策を提案しました。国民が環境問題に対して積極的に関心を向けるだけでなく、具体的な国家の方針に民意を反映させる下地ができあがっていることが窺えます。
航空便運航に制限など46項目が施行
この法律は、149の提案施策のうち46項目が盛り込まれており、「消費」「生産・労働」「移動」「住宅」「食」の5つのテーマに従って構成されています。
特に注目したい点は「移動」にあり、同法が施行されたことでフランスでは鉄道で2時間半以内の区間については、国内航空便の運航が一部を除いて廃止となりました。これにより、多くの二酸化炭素を排出する「飛行機」に対して一定の制限がかけられ、より二酸化炭素排出量が少なくフランスで推進されている電気自動車・ハイブリッドカーの活用が促進されることになります。
そのほか「消費」では環境負荷を表示する制度『エコスコア』の導入が、「住宅」ではすべての住宅を断熱性能でランク付けした上で低ランク住宅の賃貸禁止などが義務付けられています。
2030年までに温室効果ガスを40%削減を目指す
フランスは、1990年比で2030年に二酸化炭素を含む温室効果ガスを40%削減するという目標を立てています。
また、フランスの2022年時点のエネルギーミックス(電源構成)は、原子力40%、固体バイオマス4.4%、水力2.4%、バイオ燃料1.3%、ヒートポンプ1.3%、風力1.6%、天然ガス15.8%、石炭2.5%、廃棄物0.8%、石油28.1%、その他1.9%となっています。
出典:ADEME
2030年までにはこの構成を、太陽光68%、風力11%、バイオマス6%、水力4%、地熱3%、輸入地熱3%、バガス3%、海洋温度差発電1%、水圧1%とすることを目指しています。
出典:ADEME
フランスは環境に対する具体的な取り組みとして、
- フードロスを禁止する「食品廃棄法」の制定
- 使い捨てプラスチック製品の廃止
- 電気自動車・ハイブリットカーの導入促進
- 暖房の使用規制
- 衣料品再利用の義務化
などを進めています。フードロスや自動車(ディーゼルカー)などへの対策についてはまた詳しく紹介していきます。
今回はフランスで行われている環境対策について「気候変動対策・レジリエンス強化法」を中心に取り上げました。アップルツリーは今後も、国内のみならず各国で行われている環境問題への対応を紹介してまいります。