はじめに
近年、企業経営や投資活動において、持続可能性が重要なテーマとなっており、ESG、SDGs、CDP、TCFDという4つの用語がよく耳に入るようになりました。
しかし、それぞれ関係性が複雑となり意味が混同されやすい用語でもあります。
本記事では、それぞれの概要とイメージ、環境や経済に与える影響について解説します。
目次
ESG (環境・社会・ガバナンス)
ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った言葉であり、企業が持続する可能性を上記3つの観点から評価するための基準です。
環境面や社会面の要素が含まれているためSDGsと混同されがちですが、SDGsは国連や各国の政府が主体となる「行動指針」であるのに対し、ESGは「投資家や企業」を主体とした「評価の指標」です。
投資家は、財務データだけでなく企業のESGに関する3つの側面を考慮して投資判断を行います。
環境への影響
ESGの基準を満たす企業は、温室効果ガスの排出削減や廃棄物削減など、環境保全に積極的に取り組んでいます。
これにより、持続可能な社会づくりにも貢献しています。
経済面への影響
ESGスコアの高い企業は、投資家からの信頼を得やすく資金調達に寄与します。
また、社会的責任を果たす企業としてブランド価値が向上し、新たな顧客や取引先の開拓など、長期的な成長も期待できます。
SDGs (持続可能な開発目標)
SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年に国連が採択した17の目標から成る持続可能な社会を実現するための行動指針です。
気候変動対策、貧困解消、ジェンダー平等など、現代社会の幅広い課題をカバーするため、17のゴール・169のターゲットから構成されています。
SDGsは持続可能な未来を実現するための目標(ゴール)、ESGは企業が取り組むべき課題や経営方針の基準(手段・プロセス)ですが、どちらも「サステナブル(持続可能)な社会」の実現に向けたものとなり、共通するものも多いです。
そのことから、企業がESGに配慮した取り組みを進めれば、結果としてSDGsで定められている目標達成も実現できると考えられています。
環境への影響
目標13「気候変動の軽減」や目標15「陸上生態系の保全」、目標14「海の豊かさを守ろう」など、環境問題解決に直結する目標が含まれています。
私達が安心して生きていられる環境を未来へ繋いでいくためにも、世界の新たな基準となりつつあるSDGsを一人ひとりが意識することが大切です。
経済面への影響
SDGsが目的とする「持続可能な世界」とは、人類による地球環境の保全と利用、消費と再生とがバランスを保ち、途切れることのない世界を目指すものです。
SDGsに取り組むことで、恒久的に持続する社会的価値を創出し、新たな市場を開拓する機会が生まれていきます。
CDP (環境に対する情報開示を促す組織)
イギリスで設立された国際的な環境非営利団体のことをCDPと呼びます。
CDPは、環境問題に対して企業が取り組んでいる環境情報を収集し、投資家や政府機関に提供する非営利組織(NGO)です。
CDPは、企業の環境課題への取り組みを投資家が正しく評価できるようスコアリング(CDPスコア)を行い、機関投資家などへ向け情報を開示しています。
環境への影響
企業がCDPを通して情報開示を行うことで、自社の環境影響を明確化し、改善策を講じる動機が生まれます。
これにより、CO2削減や水資源の効率的利用が進みます。
経済面への影響
CDPは、世界中の投資家から高い信頼を得ているため、高い評価のCDPスコアを獲得することは企業の透明性と信頼性を高め、ESG投資を獲得する機会を得ることができます。
また、680以上の機関投資家が、CDPを介して企業に対する情報開示を求めており、CDPを通して情報を開示することは、大きな対外的アピールとなります。
TCFD (気候関連財務情報開示)
TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は、日本では「気候関連財務情報開示タスクフォース」と呼ばれており、気候変動が企業財務に与える影響を開示することを推奨する国際組織です。
TCFDに基づく報告書では、気候関連の財務情報、企業の気候関連リスク評価やその対応策が詳述されています。
また、TCFDとCDPは、企業の環境情報開示を促進するフレームワークで混同しやすいですが、その目的と活用方法に違いがあります。
CDPは「広範囲の環境データの収集と共有」を目的とし、企業の環境リスク管理とベンチマーキングを支援します。
一方、TCFDは「気候関連の財務情報開示」を目的に、企業の気候変動対策とリスク評価を促進します。
環境への影響
気候リスクの開示により、企業は環境への影響を最小限に抑える戦略を採用します。これが結果的に持続可能な社会の構築に貢献します。
経済面への影響
気候リスクへの適応力を示すことで、投資家の信頼を獲得し、長期的な資金調達や事業の安定性が向上します。
まとめ
ESG、CDP、SDGs、TCFDは、「持続可能な社会・未来」を実現するために必要不可欠となる要素です。
SDGSは地球全体が目指すゴール、ESGは企業が対象となる指標、CDPとTCFDは企業のESG経営を査定するための手段となります。
上記は、経済と環境を両立させるための重要なフレームワークとなり、これらを正しく理解することが持続可能な未来を築く第一歩となります。