創/蓄エネルギー

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日本の未来を支える太陽光以外の再エネ達。風力発電と水力発電について知る①【現状・課題編】

2025.01.29

1.はじめに

日本は現在、脱炭素社会の実現を目指し、再生可能エネルギー(再エネ)の導入を積極的に推進しています。その中でも、「風力発電」と「水力発電」は、太陽光発電に次ぐ重要な役割を担っています。これらの技術は、日本の豊かな自然環境を活用できるポテンシャルを持ちつつ、それぞれ独自の可能性と課題を持ち合わせています。

今回は、前編と後編に分け、風力発電と水力発電を中心とした技術が直面する課題とその解決に向けた取り組みについて掘り下げます。再生可能エネルギーの中核を担うこれらの技術を知り、持続可能な未来へ向けての一歩を一緒に考えていきましょう。

後編はこちら:

日本の未来を支える太陽光以外の再エネ達②風力発電と水力発電から紐解く課題と展望【クリーンエネルギーの未来編】

2. 太陽光以外の再エネ技術の現状(風力と水力)

風力発電と水力発電は、日本のエネルギー政策において重要な役割を担っております。

風力発電

風力発電は、地上に設置する「陸上風力発電」と、海上や湖上・港湾上などに設置する「洋上風力発電」があります。

その中でも、洋上風力発電は広大な海域を活用できるため陸上よりも発電効率が高く、昼夜問わず安定した出力を維持できる可能性があります。また、風速の強い地域では、再エネ導入比率のさらなる向上が見込まれます。

洋上風力発電は、2030年までに5.7GW、更に2040年には最大45GWの導入を目標としており、太陽光発電に次いでの再エネ拡大の柱として期待されています。
出典:経済産業省資源エネルギー庁「これまでの洋上風力政策の進捗」(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/yojo_furyoku/pdf/024_01_00.pdf

風力発電のイメージ

水力発電

水力発電は、発電コストが低く、天候や季節の影響を受けにくい安定した供給源です。

水力発電と言うと、ダムなど大規模な水力発電所が想像されやすいかと思いますが、近年注目されているのは、中小水力発電と呼ばれる、河川や用水路を活用した水力発電です。

中小水力発電とは、中水力発電と小水力発電を包含する広い概念のことを指します。
国や機関によって基準が異なり、明確な定義はありません。発電出力10,000kW~30,000kW以下の発電方式をまとめて「中小水力発電」と呼称することもあります。
中水力と小水力のおおよその基準は次の通りです。

発電量用途利用設備等
中水力発電1万kW以上10万kW未満広域供給、主要電源中規模のダム・河川・水路など
小水力発電1000kW未満局所的・分散型の電力供給溜池、用水路など

2022年3月末時点の中小水力発電の導入量は990万kWとなり、2030年までに、50万kWの導入拡大が目標として掲げられております。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁「中小水力発電導入促進に向けた手引き」(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/data/202402_water_tebiki.pdf

小水力発電のイメージ

3. 風力発電が抱える課題

野生生物の生態系への影響

⾵⼒発電は、⾵況の良好な場所が⽴地点として選定されますが、そうした場所は⿃の渡りルートであることが多くバードストライク等が懸念されていたり、希少な野生生物の生態系への影響が強く懸念されております。

⾃然公園など、優れた景観を有する場所も多いことから、事業者と地域住⺠や環境団体等との間で軋轢が⽣じています。

洋上の厳しい自然環境への適合

海域で実施される洋上⾵⼒発電の環境影響評価においては、環境影響評価に必要な基礎的な環境情報が⼗分に整備されていないという課題があります。

また、海域の現地調査は天候の影響を受けやすいことや、⾵⾞へのアクセスが船舶等に限定されることなど、陸域の調査に⽐べて様々な制約があることも大きな課題となっております。

洋上⾵⼒発電のイメージ

そのほか、陸上に設置される⾵⼒発電の騒⾳や振動問題、メンテナンスと発電量のコストバランスなどが課題として挙げられています。

4. 水力発電が抱える課題

適地の減少による小規模化、奥地化

水力発電は、有望な開発地点から優先的に開発されており、現在残されている開発地点は奥地化・小規模化しております。

未開発地点の約6割が3MW未満と小規模なものが多くなっており、今後は、出力が小さいものが増え、奥地化により、仮設や進入路の整備費、送電設備整備費等がかさむと想定されています。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁「中小水力発電導入促進に向けた手引き」(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/data/202402_water_tebiki.pdf

法令範囲や関係者(土地所有者)の把握

土地所有者を確認し、土地購入や賃借、工事に関係して調整が必要な関係者を整理します。

しかし、中水力発電の候補エリアは、土地の保有権がまたがっていることが多く、多数の権利者との調整が必要になります。また、山間へ設置する場合など、転居や相続により地権者が不明瞭になっている事も多く、結果として法的手続きが煩雑となりリードタイムが長期化してしまうのです。

中規模なダムの画像

その他にも、気候変動の影響による不確実性の増大や、地域の合意、環境・生態系への影響などが課題として挙げられています。

5. 【現状・課題編(前編)】まとめ

風力発電と水力発電は、日本の再生可能エネルギー政策において重要な柱となる技術です。

それぞれの特性を活かしつつ、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた取り組みが進められていますが、課題も浮き彫りになってきております。

風力発電の現状・課題のまとめ

環境影響評価の整備不足や、野生生物への影響といった自然環境との共生が課題です。また、海上での設置や運用には厳しい自然環境への対応が求められています。一方、陸上風力発電では、騒音や振動問題、地域住民との合意形成が引き続き重要です。

水力発電の現状・課題のまとめ

適地の減少や小規模化が進行しており、開発コストの増加が懸念されています。また、土地所有者との調整や法的手続きの煩雑さが開発プロセスを妨げる要因となっています。

これらの課題を解決し、技術の可能性を最大限に引き出すことは、日本の脱炭素社会の実現に直結します。

以上、前編では、日本の未来を支える太陽光以外の再エネである、風力発電と水力発電の現状と課題について解説しました。後編では共通する課題やそれぞれの展望、そして「実は近い将来に待ち構えている、全く新しい再生可能エネルギーの未来」について解説していきます。

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